翼のハナシ

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そして僕は学校へ向かった。 今が冬で良かった。 ブレザーのジャケットとまだ少し早いけれどマフラーをしていれば包帯で抑えた小さな背中のもりあがりに気付く人なんて居ないだろう。 いつものように友達と待ち合わせて、いつものように満員電車に乗り込む。 たわいのない話をして、笑う。 まだ大丈夫。 まるでいつもと同じ朝。 まだ“普通”なんだ。 「お前もうマフラーしてんの?暑くね?」 「いや、風邪ひいちゃってさぁ。喉いてぇの。」 マフラーのこともちゃんと言い訳できた。 友達は 『気をつけろよ』 なんて言ってくれて、不審がってる気配もない。 よかった。 どうにか授業も乗り切って、僕は何処にも寄らずに家に走って帰った。
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