「籠の鳥」

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 可哀想に、悲しい君。こんな僕に捕まって、あがくこともせずに。  可哀想に、優しい君。君の周りにはもう、死ぬまではがれることのない、鉄の格子がはめられているんだよ。君が逃げ出せないように。  君はきっと青い鳥。幸運を運ぶ青い鳥。もしも翼があったなら、青い空を高く高く飛び回り、誰にともなく幸せを運ぶのだろう。優しく強い、けれど脆い君の愛で。  でも、駄目だよ。君は僕のものだから。僕だけのものだから。誰の目にも触れさせてなんかあげないから。  知ってるよ。大丈夫、分かってる。  君が僕を嫌っていること。  君が僕を恐れていること。  君が僕を憐れんでいること。  口では愛していると言いながらも、本当は何ひとつ、僕に預けてくれたものはなかったということ。  知ってたよ。分かってるよ。分かっていた、つもりだったけれど。  じゃあ、一体なんなんだろう、この現実は?  君はそんなに僕が憎かったの? 終わらない関係が絶望だったの? そんなに僕から、離れたかったの?  鍵の開かない籠の中、光も差さない部屋の中、無音に近い静寂の中で。  僕は入口に立ち尽くし、茫然と、動くことなんて出来やしないで。  変わり果てた君の姿を、真っ赤に染まる血の海でまどろむように横たわる君を、見つめることしか出来なかった。        暗い鉄の、籠の鳥。  ちりばめられた青い羽。  目の前には、君の死体。          ―――――飛び去っていった、僕の、幸福の青い鳥。                     END
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