第十三章 迫り来る危機

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「ハっハンナ姉ちゃんとこで寝ろよ!こっち来んなっ!!」 涙の痕を隠すかのように、マレクは目をこすった。 「無理に強くならなくていいんだよ…。私達もマレクと同じように、本当の家族はもういない。 だけど、今の私の家族はハンナがいてマレクがいる。マレクは一人ぼっちじゃないよ…」 マレクをギュッと抱きしめ、頭を撫でた。 「ばっ、バカ!やめろよ…、恥ずかしいじゃねぇかっ」 いつもの減らず口を言いながらも、マレクの目には涙が溢れていた。 ゲットーに来て以来、ここの住民は死体を見慣れるという、昔では考えられない感覚になっている。 しかし、家族の死は別だ。 でも、悲しんでばかりいられないのが現実。 その現実は、まだ子供のマレクには重すぎたであろう。 その夜、私はマレクが深い眠りにつくまで泣きじゃくる彼の隣に横たわり、胸をトントンと優しく叩いた。
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