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雅斗は10分程走って、駐車場の表示のあるホテルを見つけた。
余計にハデな電飾がなく、黒と白のシンプルな外観のこじんまりとしたホテルだった。
雅斗はバイク便のアルバイトの時に見かけたことはあったのだが、
まさか自分がそこを利用することになるとは考えたことがなかった……。
二人はあいかわらず無言のまま、車は静かに駐車場に滑り込んだ。
……
瑠香は伏し目がちに前を見たままだった。
雅斗も表情は固かった。
駐車場所を示すラインに合わせて所定の位置に車を停める。
エンジンキーを抜いて、雅斗がゆっくりとドアに右手をかけた時、
瑠香が、雅斗の左手の裾を引いた。
「ごめんなさい……。
今はやっぱり
できない……」
瑠香は視線を下に落としながら、
雅斗の方を見ずにつぶやいた。
小さな声ではあったが、固い口調には強い決意が込められていた……。
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