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康永の潜在意識が、
『こいつらはやばい!!!』
と告げていた。
これまで何人かの異能力者と対峙してきた康永ではあったが、身体の震えが止まらないという経験は初めてだった。
しかし顕在意識では、クルセイダスの機密保持のためのデータの消去キーを押すことを忘れはしなかった。
「さて……井澤くん……。
君に聞きたいことがあるのだが……」
細身で作り物のように真っ白な顔つきの男が流暢な日本語で尋ねる。
井澤が無言でいると、男は下品に口を歪ませてニヤつきながら、
「この娘の命と引き替えるならば、情報など安いと思わないかい?」
と携帯電話の画面を開いた。
画面には泣き顔の「琴」の顔が写し出された。
『琴……!!
……しかも今日着ていた服だ……』
白い蝋人形のような男は狼狽する康永の表情を満足気に眺めた。
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