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彩:『そう言えば惺ってパスポート持ってたっけ?
あたし持って無かったから,電話切ってから直ぐに作りに行ったよ。
ギリギリ間に合うって。』
惺:『オレ五年ぐらい前からパスポート持ってるよ。
彩知ってるじゃん。
あの事件のこと忘れちゃったのか?』
彩:『あの事件? ……っ!!』
惺:『思い出したか? TK7号事件のことを?
五年前にアメリカで行われたオペ,そしてそこで超有名日本人医療チームが起こした医療ミス。
アメリカと日本の警察が全力で捜査したんだよ。
そこで父さんはアメリカに行ったんだ。
母さんも東京高等裁判所でこの事件の裁判があって,父さんも現地に居るから,オレと一緒にアメリカに行ったんだよ。
まあ,母さんの判決が初めて上告となった事件だよ。』
彩:『ゴメン,変なこと思い出させちゃったね。
結局事件はオペ担当医師の無罪で幕を閉じたんだよね。』
惺:『いや,昨日父さんが言ってたんだけど,TK7号事件の再審が決まったんだ。
父さんも母さんもかなり気合いが入ってたよ。 まあ,オレもだけど。
でも,オペの担当医師の名前だけ忘れちゃったんだよな。
情けないなあオレ…』
彩:『そんなことないよ。あたしなんかほとんど忘れかけてたんだもん。
五年も前のことだから仕方ないよ。』
惺:『ありがとう。 取り敢えず,急ぐぞ。
学校に遅れちまう。』
彩:『は~い。 ちょっと待ってよぉ,走るの速いってばぁ。』
このときは思いもしなかった。 TK7号事件とこれから起ころうとする事件が関係しているなんて。
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