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真夜中、或る家族はただならぬ気配に飛び起きた。
三人は顔を見合わせる。
父親は娘に言った。
「心、お前は押し入れに隠れていなさい。静かになるまで出てはいけない」
娘は嫌がった。
「父上、私も…」
「心!!」
父親は娘の言葉を遮った。
「父上の言うことが聞けないのか…?」
父親は凄む。
父親には既に戦う心構えはできていた。
すがるように見つめていた娘だが、父親の意を感じ取ったようだ。
「…分かりました。父上」
娘はそれだけ言うと押入れに入った。
母親が押入れを閉めた。
そのときの母親の笑顔を娘は忘れないだろう。
最後に見た母の顔なのだから。
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