声。

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「お前、ボーカルでもいけたんちゃう?」 ワンフレーズぐらいちょこって歌って佐倉先輩をちらって見たら、そんなこと言われた。 「無理ですよ!俺あんま歌上手ないし!」 「そぉか?」 「それに俺らのバントはボーカルちょっと凄い人がやってて…。」 「凄い人?プロとか?」 「プロちゃうけどカリスマやった。なんかその人が歌ったら空気がピリって変わるんですよ。」 そう、いつきくんはほんまに凄かった。 絶対的な存在感。 いつきくんの声と自分のギターの音が重なる瞬間の快感。 「ふーん。けど俺はヤスの声好きやで?ヤスの声でその歌ちゃんと聞いてみたい思ったわ。」 え…? びっくり…した。 佐倉先輩が大谷と同じこと言うから。 「まぁシロートの俺に言われてもなぁんもうれしないかもしらんけどな。」 「ううん!」 「びびった!急にでかい声出すなやー!」 「佐倉先輩!ありがとう!」 「アホ、礼言われることしてへん。」 佐倉先輩の手が俺の顔を押さえてぐいって離される。 よくみたら佐倉先輩の顔真っ赤やった。 「でもうれしかったんです。」 「アホ…。」 ぐいぐい押してくる手が、俺の髪を一瞬くしゃって撫でた。 佐倉先輩は目を細めて笑ってる。 なんでか…懐かしい気がした。
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