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「じゃ、皆、良いお年を~」
暗くなるのが早いので、後片付けは寮生の男子がすることになった。
他の人は各々帰って行った。
葵は洗い物、澤田は職員室に鍵の使用日誌を届けに行き、俺と寅吉先輩は部屋の掃除をしていた。
「翔吾翔吾、魔女の○急便!」
先輩は、この人なら絶対やりそうなネタを披露していた。
しかも、ほうきの前後が逆だ。
これじゃあ常時、バック運転だ。
「とう!」
しかも机の上から跳びやがった、この阿呆Σ( ̄□ ̄;)
たん!と軽快な音を立て、地面に降り立った。
「先輩、魔法切れてますよ。」
ちょっと哀れな(馬鹿すぎて)に、声をかけてやった。
でも先輩は、着地した地点から動かずに、ちょこんと立ったまま。
「先輩・・・?」
「翔吾、」
それは、いつもに比べたら静かすぎる程の声だった。
「『今年モヨロシク』」
何かを真似て、繰り返すような口調で、
「・・・・」
時々この先輩に訪れる静寂に、俺はただ惑わされていた。
いや、いつものおふざけな態度の方こそ、俺を惑わしているのかも知れない。
「『今年モ・・・』いや、これからもずっとヨロシクな?」
ようやく振り向いた先輩は、いつもどおりへらへらした顔だった。
「・・・はい。」
「よぉし!老後の介護まで頼むぞ、翔吾!!」
「その前にサーカスにでも売るので心配しないで下さい。」
「えΣ( ̄□ ̄;)おれ、南京玉すだれぐらいしか芸もってないぞ!!」
「嘘おっしゃい、綱渡りとか、寒中水泳とか、瓦20枚割とか出来るくせに」
「無理無理!!!俺弱いから、板チョコ一枚割るので精一杯だから!!」
「弱っっ!!男子高校生としてそれはどうよ!?」
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