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部屋の灯りを消し、テレビも消した。
オンラインゲームをしながら眠りについていった父を横目に私は台所へ移動した。
いつも通り、携帯の灯りだけを頼りに薬を1錠取り出しコップ一杯の水で流し入れた。
「よし…今日も大丈夫だ。」
コップを洗おうと蛇口を捻る。
静けさに包まれいたはずの暗闇の中に水の流れる音だけが響きわたる。
私は今日の友人との会話を思い出していた。
“あんたの中であたしは友達でいいんだよね?”
“そうだよ。”
“…あんたの中であたしの位置は何?…以前好きだった女の子っていう位置だけだったらあたしは今まで通りあんたを大切な友人としては見れないよ。”
返信は来ていない。
今日は来ないかな。
寝てしまっただけだろうか。図星だったのかもしれない。
「あーぁ…あたしもそれに触れなきゃよかったかもな…」
コップを流台に置き、私は廊下に出た。
玄関の灯りは灯されたまま。洗面所の灯りは戸の隙間からほんのすこしだけ漏れていた。
唯一暗闇で包まれていた階段に向かう。
一段一段転ばないように2階へと進む。自動式ライトが今にも消えそうなオレンジの光で私を照らす。
私は階段に座りこんで耳を澄ませた。
オレンジの光も飽きてしまったのか、私を照らすことをやめ暗闇へと帰っていった。
耳鳴りが聞こえ始めるほど辺りは静けさに包まれ、暗闇で満ちている。
ここで携帯の着信音のひとつでも流れればホラー的な話にもなるんだけど、本当に物音ひとつしない。
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