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「あれ、いまどこなの?まだ実家じゃないの?」
「顔を見て話したくてさ、君の家に行こうとしてさ。迷惑かな?」
迷惑なもんか、もう一度君の顔を見れるなら。もう一度君を抱きしめられるなら、僕はどんなに幸せなことか。でも、僕の口から出た言葉は違った。
「迷惑だよ。年末で忙しいのにさ。実家でお母さんだって待ってるんだろ。早く帰りなよ。」
「ごめん、帰るね。さよなら。」
電話を切って彼女は歩き出す。
「おーい!おーい!」
彼女は振り向く。遠いけど、彼女の目には沢山の涙が見えた。僕はその涙が消えてなくなるように大きな声で叫んだ。
「がんばれよ!きっとお店繁盛するよ!俺も、ちゃんと就職決まったら行くからさ!がんばれよ!」
信号が赤に変わる。僕と彼女の間に沢山の車が走る。彼女は精一杯何か言っているが聞き取れない。都合よく解釈するなら「大好きだよ」と「ありがとう」と言っていたように思う。僕にとっても、彼女にとっても二年半の最後には相応しい終わり方なんじゃないだろうか。
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