出会いは雪の降るあの日

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真っ白…    真っ白な世界…   誰かが私を呼ぶ   ユキ…    ゆき…   耳鳴りの様に頭の中で反復する   ゆき    ユキ…       ユキ   うるさくて耳を押さえた でも頭の中で響く音は塞げない   うるさい    私を呼ぶな…   私を抱くな……      私に関わるな…    汚らわしい   やがて雑音混じりに反復する耳鳴りはだんだん薄らいで 意識を取り戻すにつれて消えていった     「…あ………」     まだ夢をみているのだろうか…   聞き覚えのない声がする   ……目を開けている… どうやら夢じゃない… …頑張ってもう少し開けてみよう…     最初に見たのは   着物が着崩れ、露出している私の肌と   着物に手をかけている見知らぬ男   「?………」 「お…落ち着け…これはだな……頼むから聞いてくれ…な?」 「………な…ッ!」   やっと状況を把握した私はあわてて男から離れ、警戒と嫌悪に満ちた眼差しを向けた   「…ははは…はぁ…」   そんな私を見るなり頭を掻きながらため息を吐いた しかし落ち着いて見ると彼の左手には布巾の様なものが握られていた そして心なしかフラつく   「おいッ!」   足がもつれ危うく倒れそうになった私を彼は抱き支えた   「…ッ…お前…一体なにを…」 「俺はアンタの汗を拭いてやってた…それだけだ」   彼は信じろと付け加えると再び布団へと寝かしつけてくれた
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