まんじゅう

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  酒好きのカズミだが甘いものにも目がなかった。 駅前に和菓子屋があり、その店の名物『あじろの里』が大好きだった。 それは直径13㎝ほどの大きな三笠まんじゅうで中に栗がいくつも入っていた。 カズミはそのまんじゅうを一人で3つほど食べてしまう。 酒を飲みながら。 その店にはお供え用の15㎝~20㎝ほどのバナナや桃や栗の形をしたまんじゅうもある。 中は白あんで、はっきり言ってお供え目的でしか需要のない商品だと思うのだが、カズミはそのとてつもなく大きいまんじゅうを一人でペロッと食べてしまう。 しかも酒を飲みながら。 カズミの父はまんじゅうを食べて食中毒で死んだ。 カズミは酒の茶漬けで耳が聞こえなくなった。 父の命を奪ったまんじゅう 音の世界を奪った酒 しかしカズミは 共に上手に付き合って生きてきた。 駅前の和菓子屋は時代の流れか今は半分が洋菓子屋になっている。 今も果物の形をした大きなまんじゅうがあるのかは定かではない。  
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