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ある日カズミはガラスケースが欲しいと言いだした。
カズミが将棋や釣りで貰ったトロフィーや楯を飾る為のケースが欲しいと言うのだ。
確かにトロフィー等は埃を被りやすく掃除も大変だったので家族でガラスケースを見に行った。
しかし大きなトロフィーが入るようなガラスケースは売っておらず、特注になってしまった。
その年、中学にあがったシゲユキはたくさんのお年玉を貰っていた。
カズミはシゲユキに少し出してくれとねだった。
シゲユキはカズミにねだられた事など今迄なかったので驚いたが、気持ちよく二万円出してあげた。
しかし、もうすぐガラスケースが出来るという頃にカズミの癌が見つかりカズミは入院してしまった。
入院してもカズミはガラスケースの事が気になっていた。
少し良くなった頃、カズミは病院を抜け出し家に帰ってきた。
どうしたん?
シゲユキは驚いて尋ねた。
これ、見に来た
カズミはガラスケースを指さしにっこりと微笑んだ。
カズミは家族に叱られ再び病院へ戻った。
癌が再発しかなり病状が悪化してきた時、病院の計らいで正月だけ家に戻って来た。
病気の事はわからないカズミだが死が近づいている事は自覚していた。たくさんの友人を呼び食事をした。
カズミの背中の箪笥の上にはカズミの自慢のガラスケースがあった。
その月の24日
カズミは亡くなった。
後日、シゲユキが母に聞いてわかったのだが、カズミはシゲユキからお金を貰った事を内緒にして母からもお金を貰っていたようである。
結局カズミの最後の宝物は、息子と女房からの最後のプレゼントとなった。
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