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  まだ小学校に入って間もないシゲユキはお菓子を買いに近所の駄菓子屋へ行った。 シゲユキがお菓子を選んでいると、店の中の一段高い所に立って見ていた駄菓子屋のおばさんが急に笑い出した。 「アハハ、あんた、耳、犬に噛まれたんか?」 「えっ?」 何の事かわからずシゲユキは自分の耳を触ってみた。 耳の上の方に歯形のようなでこぼこがあった。 そういえば赤ん坊の頃、犬に手を噛まれた記憶がある。 シゲユキは家に帰り、母に尋ねた。 しかし、それは犬に噛まれたものではなかった。 シゲユキがまだ母のお腹にいた頃、母がつまづいて転んだ。 幸いすぐに手をついたのでお腹を打つ事はなかったが、その時お腹のシゲユキがグルッと回った。 逆子にはならなかったものの、シゲユキは耳を手で塞いで生まれてきた。 所謂、聞か猿のポーズである。 それが原因で指先のあとが耳に残っていたのだった。 耳を塞いで生まれてきた事 それは耳が不自由な両親から生まれた自分の耳を守る為か 言葉を知る事によって汚れていく自分を恐れ、音の世界を拒んでいるのか それはこれからのシゲユキの生き方が答えになるだろう。  
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