社長の息子

2/2
150人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
  カズミの葬儀の時、たくさんの人がシゲユキに声をかけた。 「気ぃ落としたらアカンで、しっかりしぃや」 「何かあったらいつでもおいでや」 でもそのほとんどがそれっきりだった。 たった一人全く違った言葉をくれた人がいる。 それはカズミの会社の社長の次男であった。 名前は繁雄。 シゲユキの名付け親の息子なので同じ字が使われていた。 彼はこう言った。 「残念やったなあ。でも、そんなに悪い事ばっかりは続かへんよ」 その言葉が一番シゲユキの心に残った。 シゲユキはそれ以降、悩んでいる人、苦しんでいる人に、その言葉をかけるようになった。 ちなみに社長の長男は近年、超有名電機会社の社長に就任している。 シゲユキはトイレで新聞を読んでいて、そのニュースを知り、驚いてトイレを飛び出し、母に知らせた。 小さい頃よく遊んで貰ったので、シゲユキの最近の一番の自慢である。  
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!