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酒は滅法強いカズミだがウィスキーを飲むとおかしくなった。
カズミ自身はウィスキーが一番好きなのだが、ウィスキーを飲むと帽子を浅く斜めにかぶり千鳥足になる。所謂、酔っ払いの典型的なスタイルになってしまうのだ。
日帰り旅行には必ず駅の売店でポケットサイズのウィスキーを買う。
目的地に着いた頃にはほとんどなくなって、目的地では缶ビールかワンカップの日本酒を3、4本飲む。
帰りにレストランで又ビールを2本ほど飲み、家までの道程は千鳥足になる。
まだ幼いシゲユキは心配してカズミの手をひいて歩いた。
ある日帰り旅行の帰り道だった。
商店街を歩くと前に若い女性が歩いていた。
カズミは酔っ払った勢いでその女性のお尻をペロッと下から上に撫で上げてしまった。
「キャー!」
女性は驚いて後ろを振り返った。
「ご、ごめんなさい!」
幼いシゲユキはカズミの手を引きながら深く頭を何度も下げた。
女性はニコッと笑って軽く会釈し歩いて行った。
アカンやろ!
シゲユキはカズミに怒った。
カズミはニヤニヤ笑っている。
シゲユキがいるからこそできた悪戯である。
確信犯であることは間違いない。
時代も良かったかもしれない。
今なら隣で子供がいくら謝ろうとも、おおごとになっているだろう。
のどかな時代だった。
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