第一章

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    ―セントクロノス郊外 陸軍練兵所― 陸軍練兵所に到着すると、数十名単位に分けられて兵舎に案内された。 兵舎は縦長の広い部屋の両側に二段ベットが並んでいて奥にはトイレとシャワー室があるだけの簡素な建物だった。 「ここは今日から諸君らが生活をする兵舎だ。まずはこの認識表と手帳を配付する」 教官は順に名前を呼び、各々に配っていった。 「風呂は週2回。水曜日と日曜日だ。それ以外はシャワーを利用するように。で、後はこれからの予定だが、各自ベットの下に挟んである書類をよく読んでおくように。今日は解散だ。以上」 教官の説明が終ると全員、自分の番号が書かれたベットに向かった。 サムは挟んである書類を取ってベットに座り、一通り目を通した。 書類には一週間の予定や規則などが書いてある。 書類を読んでいるとカイルが来た。 班分けではサムとカイルは別々になっていた。 「よぉ、サミー。ちょっと散歩しようぜ」 「いいね。行こう」 2人は兵舎を出て適当に施設を見てまわったが、通常は立ち入り禁止の区域が多く、入れる施設は限られていた。 「あそこ入ってみようぜ」 カイルが指差したのは娯楽施設だった。 「入隊早々かよ!?先輩達であふれてるんじゃないのか」 「ビビるなよ。行こうぜ」 サムはカイルの勢いに負けて渋々うなずいた。 娯楽施設に近づくと、中からいろいろな話し声が聞こえてきた。 「やっぱ人でいっぱいだ……」 「サミー、入るぞ」 カイルも内心ドキドキしていたが、虚勢を張っていた。 「うん……」 サムは意を決して中に入ったが、中に居たのは全員作業服を来た同期生だったので驚いた。 そもそも、この練兵所には教官ら以外に先輩は居なかったのである。 しかも入隊者のほとんどがこの施設に集まっており、2人が来た時には満席に近かった。 「奥が空いてるぜ」 さっきまで虚勢を張っていたカイルも安心して、部屋の隅にある空席のビリヤード台にサムを誘った。 「俺、ビリヤード初めてなんだよな」 「そうなのか。俺も初めてだ」 「え!?」 自分からビリヤードを誘ってきたのに、その本人がやった事無いと聞いて驚いた。
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