ある少年の日常。

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何かがうまく行かない時というのは、大体において三つの原因が存在する。一つは自分自身にある原因。一つはその何か自体にある原因。そしてもう一つは、それを行うこと自体にある原因。 これらのいずれかが、もしくはいくつかが存在する場合、物事はうまく運ばないのである。 この間書いた小論文模試を思い出しながら、僕は目の前の女子を再び見る。 ピンク色のマフラー。 グレイのパーカー。 少しだけ短めのスカート。 黒いストッキング。 踵を潰して履いている靴。 再度訊ねる。 「じゃあ、僕らは一体何をすればいいんですか?」 「だから、堀切川くんを『なんとかして』ちょうだい!」 「…………」 さてこの場合、原因はどこにあるのだろう。 「なんとかしようにも、その、君の彼氏をどうにかしたいってんなら、ここに連れてきてもらいたいんですが」 「今日はもう帰っちゃったから無理だよ」 「今日でなくても」 「彼、学校終わるとすぐ帰っちゃうんだもん。一緒に帰るのすごい難しいし」 ……付き合ってんのに? 「あー……、まあ、じゃあ、分かりました」 「引き受けてくれんの!?」 「いえ、こちらから接触してみて、それから判断させていただきます。それでよろしいですか?」 「……じゃあ引き受けないかもしれないってこと?」 まあ、そうなんだけどさ。 「こちらとしても最大限の努力はしますよ。現にあなたは怖がっているわけですし」 「……分かりました。お願いします」 頭を下げると、女子は帰っていった。 「雫子」 「本物ですよ」 「そっか」 面倒だな。 「なんか、変な依頼でしたね。『彼が変だからなんとかして』だなんて。抽象的過ぎますよ」 空戸さんが唇を尖らせる。 「これでもし、『びっくり! 彼はなんと人間をゴミのように見下す人だったのでしたー』とかだったら働き損ですよ」 「うん、それはそれで怖いんだけど」 ラピュタ王もびっくりだ。 さて、今回の依頼はどんな結末を迎えるんだろうか。 クリスマスが近づく十二月半ば。 灰色の空からは雪が降っている。  
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