ある少年の日常。

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特に描写すべき事態も無く六時間目まで授業を消化し、そして放課後。 「ああ、稲雉さん」 部室へ向かおうとする途中、階段下で空戸さんに呼び止められた。待ち伏せしていたらしい。 「どうしたアリスちゃん」 「いやですよぅ、名前で呼んだりしちゃあ。誤解されちゃう」 「大丈夫。『となりの801ちゃん』は面白く読めたから」 「それでですね、本題に入りますよ」 おい。 「はい」 そう言って差し出されたのは、女子がよく授業中なんかにこっそりやり取りしている、あの、きれいに折り畳まれた手紙だった。 「これは?」 「まっちゃんが渡しておいて下さい、って。今日は用事があって部活行けないみたいなんで」 「あ、そうか。わざわざありがとう」 「それとですね、えっと」 「何?」 「ありがとうございます。まっちゃんの居場所を作ってくれて」 今更ですけど、と空戸さんは頭を下げた。 「稲雉さん達には本当に感謝してますよ」 「……そうか」 「リアクション薄っ!」 「いや、ボケ要員がいきなりシリアスになると死亡フラグだからね」 「なに言ってんですか。『人の死なない青春ミステリ』が売りの文芸部じゃないですか」 「いや、そうも言ってられないんだな、これが」 実際、一人行方不明だし。 …………。 「あら、そうなんですか。でも、その時は助けて下さいね。ピーチ姫程度のサポートならしますから」 「僕らのアリス、君が望むなら」 まったく。 最後の最後に、可愛い後輩を持ったもんだ。  
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