ある少年の日常。

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「んで、それがこの手紙なんだが」 文芸部室。 面接練習だという仁川以外の二人が来ている。 僕の差し出した手紙を読むなり、雫子と寧の表情が曇った。 「……なに、これ」 「…………」 「まあ、それが普通のリアクションだよな」 手紙に書かれているのはこんな内容だった。 私が視た記憶をここに記します。 脚色等は一切無し。視たまんまです。 夜、寝る前。 一時くらい。ベッドに潜り込むと足を掴まれた。振りほどいて眠る。 朝、起床時。 ケータイのアラームの音で目覚める。天井に女が張り付いている。起きて着替える。 朝、通学途中。 電柱の陰にしゃがみ込んで泣いている着物姿の女を見掛ける。無視するが行く先々で同じ女が電柱の陰にいる。 朝、授業中。 机の中に手を入れるとべろりと舐められる。舐めた舌を引っ張ってからプリントを探す。 昼、授業中。 窓の外を見ると何かが落ちていくのが見えた。よく見ると黒焦げの人だった。黒板の文字が消されそうになって、必死にノートに写す。 かなり短いスパンで様々な『恐怖』に遭遇していますが、動じる気配は見受けられませんでした。 なんと言うか、なんと言うか。 「確かに、『変』だね。これは」 雫子が納得したように頷く。 「で、これをどうするんだ?」 「どうしようか」 「? そういえばあんた、堀切川くん視た時になんも見えなかったの?」 「あ」 「どうした」 「見えなかったんだよな。そういえば」 「え」 「多分、彼はそれを『恐怖』とは感じてないって事……いや、それでも『恐怖』に遭遇しているなら分かるはずなのに」 「……あんたもしかして」 「………………」 まさか。 フラグが立ったのは、僕の能力か?  
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