261人が本棚に入れています
本棚に追加
メイダがやって来てから半年が経った頃のことである。
誰が言い出したか、ウサギや熊が絶滅したという噂が蔓延し、島は不穏な空気に包まれていた。
これについては、やはり猫の若い世代が殺戮を犯しているからに違いないと震え上がる者が多かったが、不可解なことに、同じ頃、当の猫達の間でも、原因不明の頓死が流行していたのである。
各々の表情が険悪になる中、住民の一部に、噂とは無関係の、ある不条理が発生していることに気づく者があった。
その不条理とは、木の実が取れなくなり始めてから久しいのに、それによって生きていたはずの猿達が、死に失せるどころか(数こそ増えないものの)、徐々にではあるが、体を強くしていることだった。
このように、説明のつかない謎の現象が島のそこかしこで起きていたが、一連の事件には複雑に交差する3つの真相があった。
猿が屈強になってきているのは、ウラゾの機転がきっかけだった。ウラゾは、いつか猫達に皆殺しにされるという被害妄想に駆られ、自力で猫を打ち負かす方法を考えた。そうして見出した手段とは、猫と同じように、動物の肉を食い、肉体を強引に強化することだったのだ。
猿達は族長の思い切った提案に戸惑いながらも、最終的には同調し、内密裏に死体を集め、やがて平然と肉を食らうようになった。
ウサギを絶滅させたのは、噂の通り、猫に相違なかった。
ノイルが自分の家族に、拾った死体を食べたり持ち帰ったりするのをやめるよう指示していたのだ。
まだあまり知られていないが、孔雀も、男が猫に食い尽くされ、既に絶滅への秒読みを始めていた。
ところが、熊だけは、猫の牙によって死に絶えたのではなかった。
猫の怪死には、餓死または病死した者の死肉を食った直後に突然無言でのた打ち、やがて絶命する、という気味の悪い特徴があった。
熊達も、他者の目の届かない所で、同様の最期を迎えていたのだ。
対して、猫が自ら仕留めて持ち帰った新鮮な肉は、ことごとく安全らしかった。近頃ノイルが、子供の遊びの範疇を越えて自発的に狩りを奨めていたのは、この法則にいち早く気がついたためであった。
――そして、苦悩する猫らがこの島の死体達に隠された真実に迫る時、惨事が始まるのだった。
最初のコメントを投稿しよう!