見えざる真実

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 ここにいる少女が、2年前にウラゾとウォルフが密談を交わしているのを見たと、ノイルに告げたのだ。  昔の話ではあったが、猫らは狼の動向に対して神経質になっていたため、ウォルフに監視をつけることに合意したのである。  この少女は、2年前と同じように、先の2人の話し合いを遠くから見張っていた。そして、ウォルフが怒鳴ったため、犯人をウラゾと示す言葉が彼女の耳に届き、近くで待機していたこの群れを呼んだのだ。    ウラゾの足元にはいかにも毒らしい液を詰めた箱が沈んでいる。もはや言い逃れの通る隙などない。 「ウラゾ。そいつを呑め。関わった奴も全員。それで終わりにしてやる」  猫の青年が、満面を怒りに歪めながら、長い牙と歯茎を見せて言った。  ウラゾは苦虫を噛み潰したような顔をして、息を飲んだ。  猫達は、今にも暴れ出しそうな形相で、尻尾をくねくねと左右になびかせながら、低く身構えている。  ウォルフと残りの猿は、一触即発の沈黙の中、体温がいやに上昇するのを感じていた。恐ろしく長い数秒間だった。  ――1人の猿が、ゆっくりと地面に片手をついた。 「ウラゾ、これで殺せ!」 彼はそこに落としてあった予備の手斧を拾い上げ、大猿に投げ渡した。  しかし、ウラゾが咄嗟に身をかがめて、それを避けたので、斧は虚しく猫の頭上を通り過ぎて落ちた。  刹那、12人の獰猛な怪物が雄叫びを上げ、一斉に猿達に飛びかかった。  ウラゾはとりわけ大きな猫の突進を胸に受けて、後ろへ倒れ、下敷きになった。 「よせ!」  反射的に飛びついたウォルフの歯が、猫の首に食い込んだ。  猫は口を大きく開けてひるみ、ウラゾの脱出を許した。  大猿はあおのけになったまま、自分が地に刺した斧に手を延べ、間髪入れず、それを猫の脇腹に力いっぱい差し替えた。切れ味の悪い刃が皮を破る音は、気弱なウラゾには心臓がかゆくなるほど鮮烈だった。  腹の肉を削られた猫は、目を強く閉じ、内臓を吐き出さんばかりに開いた口で、天と地が揺れ動くほどの悲鳴を響かせ、体をよじって転げ回った。  一方では、猫の口の中に入った手首を引き抜こうと、半狂乱になっている猿がいた。  また一方では、4人がかりで1人の猫を囲み、動物の骨やら木の枝やらで殴ったり刺したりしている猿がいた。  この小さな修羅場で、怒号と悲鳴がぶつかり合い、鮮血や体毛が飛び交っていた。
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