動物の島

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     メイダが食物を要求したので、ノイルは林に潜んでいた孫をしぶしぶ呼び出し、縄張りから死体を運んで来るよう指示した。  しばらくすると、猫の少年が黒いリスをくわえて小走りに戻って来て、ノイルに促されるまま、遺骸をメイダに差し出した。  体毛もうろこもない男がそれを食べ始めると、驚いたことに、欠損していた左足が、独りでに再生を始めたのだ。  砂だらけの切り口から、赤い粘液が重力を無視した方向へ糸を引いて滴り、それが白く固まって骨の形を作り、その上をまたあの粘液が伝い、凝固して、筋肉となり、血管となった。  メイダがリスの肉を食べ尽くす頃には、元々土だった彼の足は、皮膚を持つ肉体として、完全に生まれ変わっていたのである。  その光景を間近で見ていた2人はもちろん、遠目に眺めていた者達も、我が目を疑い、凍りついた。  メイダは礼を言いながら体を起こし、再び多数の島民がいる方角を向き、最初よりもやや遠慮の窺える声で、語りかけた。 「見ての通りだ。島が危ないのは知っているだろう。そこで、重大な話があるので、聞く耳のある者は集まってくれ」  動き出す者はいない。 「1人ぐらい来てくれ。お前達は意外と冷たいのだな」  長い時間、誰も口を開かなかった。  ――やがて、島のどこかから、野太い声が聞こえた。 「食べたりしないと誓うか」  立ったままうなだれていたメイダが嬉しそうに顔を上げ、力強く答えた。 「誓う、何もしない」  すると、林の北に位置する草むらに伏せていたウラゾが、黒い毛に覆われた巨体を露わにし、のそりのそりとメイダに歩み寄った。  ウラゾと話していた青年は「誰も食わないだろうよ」とつぶやいて意地悪く微笑んだ。 「本当に神様の御子であらせられるか」  自分より頭1つ分ばかり背の高い大猿の問いに、メイダは自信があるふうに頷いて見せた。  ウラゾが深く息を吸い、どこか不安げな態度で言った。 「私はじかに神様とお会いしたことがある。神様もまた、あなたのように肌が剥き出しであった」 「そうか。ならば話は早い。いざという時の切り札として、神が隠した『宝物』についても聞いているな」  ウラゾは少し考えた後、知らない、とメイダの目を見た。 「嘘をつくな」 「神様の御子ともあろうお方に嘘が通じるとは毛頭思っていない」
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