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メイダは怪訝な顔をして、林から神に会った経験のある者を募った。
ウラゾも「このお方は本物だ」と強調した。
2人の後ろで、ノイルが気だるそうに名乗り出、続いてウォルフが砂浜に出て来た。
メイダはひとりひとりに、神から宝物の話を聞いたかどうか尋ねたが、彼らもまた素知らぬ様子で首を振った。
身を隠していた動物達が、安全を認めてあちこちから集まってきた。
「では、つまりは見つけていないのだな」メイダはうつむいて、腰と額に手を当てた。「これではよくないな」
大勢が囲んで不思議そうに見つめる中、ノイルがメイダの顔を覗き込み、目を細めた。
「どうする気だい。結局、あんたもそこのじじいと同じことを考えてるんじゃないのかい」
狼の老紳士は眉をひそめ、ノイルを睨んだが、目が合った途端、舌打ちしてそっぽを向いた。
メイダが両手を垂らし、動物達を見回した。
「じつはだな――」
ノイルはメイダの発表を聞き終えると、老婆らしくのんびりと縄張りへ帰って行った。
彼女の家は海岸の南側に隣接した草原地帯にあって、そこには、うなじの周りに立派なたてがみを蓄えた男達や、非力なノイルでも口でくわえて悠々と歩けるような、小さな子供達が、のらりくらりと生活している。
辺りにはウサギの死体や内臓のない子熊が横向きに転がっていた。
「おかえり、お婆ちゃん」
幼い孫が無邪気に笑いながら、ノイルに駆け寄った。
「ただいま」老婆は黄緑色の雑草の上に体を預けながら、長いため息を吐いた。「水を飲みに行くのも一苦労だよ」
「ノイル、ところで」伸縮性の大きい小腸を噛みちぎっていた男が、首を彼女に向けた。「さっき変な動物と喋ってなかったか?」
ノイルは目を閉じたまま答えた。
「ああ、話したよ。あの白い体が気になるのかい。あれは神様の子供だ」
「神様」
男は不思議そうな目をして、ノイルの顔を覗いた。
「そうだとも。何の話をしていたか聞きたいかい。ああ、ああ、教えてやるよ。いいかい――」
メイダの言っていた『宝物』とは、島の生き物を末永く繁栄させるものらしい。しかしそれが具体的にどんなものなのかは、本人も知らなかった。
また、彼が生きているうちに宝物が出て来なければ島は滅びると、メイダは語った。
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