動物の島

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 確かに島は食糧が不足して、危険な状態に陥っているが、住民は、異様な現れ方をした異様な生き物の難解な戯言を簡単に信用するほど人が好くはなかった。  神の子に従えば雨や木々が島に帰って来ると信じ、あの日から早速宝探しを始めたのは、その昔神と会っていたという者達――今のところ食糧に困っていない、猫以外――と、その仲間の一部だけであった。  ウラゾは力のある猿と共に、そこら中の木の根を掘った。  ウォルフは縄張りで怠けている男達を駆り出し、地面の匂いを嗅ぎながら、あちらこちらへ歩いて回った。  メイダはというと、生気のない林に充分な水を供給する方法をひたすら模索していた。      宝物を探すために必要な情報として、わかっているのは、『見慣れないもの』ということだけで、大きさや形、隠し場所などの手がかりは一切なかった。  ただし、皆で探せば見つけられるということを、メイダは保証した。  彼の言葉を信じて毎日探索に当たった者は、島民のわずか1割、餓えや病のために、動きたくても動けなかった者、死んでいった者は、合わせて3割いた。残りは、メイダを信じつつも、面倒くさがって協力を惜しんだ者と、宝物など存在しないと嘲笑った者達である。    メイダは動物の死体から胃袋や皮を切り取って、そこへ水を汲んでは昼夜休まず林に撒いた。猿と鳥が時々気まぐれで手伝ったが、何しろ恐ろしく広範囲の土に潤いを与えなくてはならないので、このやり方では悲しいほどに効率が悪く、やがてはメイダの顔色からも心身の疲れが窺えるようになった。
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