0人が本棚に入れています
本棚に追加
家具類など生活感のあるものは一切無く、巨大な魔法陣とさっき彼が召喚しまくったガラクタ共が床に散らばっているだけである。
目に付く出口は1つしか無く、そこへ辿り着くには目の前で頭を抱え、膝を着き打ちひしがれている気の毒な魔法使いの横を通って行かなければならなかった。
五月はなるべく彼を刺激しないようにそろりと立ち上がり、彼の横を通り過ぎようとする。
ショックを受けている人をそっとしておいて上げるのも優しさと云うものだろう。
結局は後で自分がトドメを刺すのだから。
まぁ、ぶっちゃけ、何か地雷を踏んで、絡まれるのが嫌なだけなのだけれど…。
そんな訳で、五月は内心で異世界の景色ということでドキドキと胸を高鳴らせながらもそっと歩を進めていたのだが、
素早く伸びて来た手にズボンの裾を掴まれてしまった。
「どこ行く気だ?」
質問された。
何だろう…。逃げるようにでも見えただろうか…。
っていうか、ちゃんと周りが見えていたんですね。
隠すことでも無いので、五月は素直に答える。
「別に。景色を見に行こうかと思って。」
「駄目だ。」
しかし、彼はあっさりと否定する。
五月は何だか理不尽な気持ちになり、少し乱暴に彼女のズボンの裾を掴んでいた彼の手を払った。
「何故ですか?別に逃げる訳でも無いんだから良いでしょう?それ位。
大体、僕は貴方に帰してもらうしか無いんだから勝手にどこかへ行く訳無いじゃないですか!
それに、見たところ僕は人違いのようですし、帰る前の記念ぐらい多目に見てくださいよ!!」
「人違いなんかじゃ無い。」
「は?」
「っつうか人違いなんかであって堪るかってんだ!!
この魔法円を完成させるのに一体どれだけ時間掛けたと思ってんだ!?
俺の魔法式は完璧だった!
過去のアルゴや、ソハーラの理論まで応用したんだぞ!?
念には念を入れてっ!!
失敗何かするか!!」
……思っクソそっちの都合じゃ無いか…。
最初のコメントを投稿しよう!