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五月は思わずには居られ無かった。
こっちの都合も考えず、いきなり変な(……ファンタジーは大好きだけど)世界に呼び出したのはそっちだ。
しかも、明らかにそっちに非があると云うのに…これじゃあ逆切れじゃ無いか。
怒鳴り返してやりたくなったが、五月はその憤りをグッと抑える。
ここで怒鳴り返して、彼に臍でも曲げられたら困るのは結局こちらなのだ。
無事に家に帰してもらうにはここは1つこちらが大人になるべきではないか。
そこまで思い、五月は極上の微笑みを浮かべ、魔法使いに優しく語りかけ始めた。
「はい。
魔法の事は私には良く解りませんが、この大きな魔法陣を見れば貴方の努力が良く分かります。
ただ、今回は何かの間違いだったんですよ。
だったら次こそ成功出来ると思いませんか?
もう一度、頑張ればいいじゃないですか!
でも、私は貴方の役には立てません。
むしろ、何か取り返しのつかない邪魔をしてしまうかもしれません。
ならば、貴方の役には立たない私など、とっとと帰して、早くもう一度やってみた方が得策です。
ね?
けれどせっかく貴方がこんな素晴らしい世界に呼び出してくれたのに、すぐ帰ってしまう何てもったいないじゃ無いですか!
せめて、景色を見せて下さい。
私はそれで、十分です…。」
言って、扉に向かおうとした五月だったが、素早く伸びて来た魔法使いの手に、再びズボンの裾を掴まれてしまったのだった。
「おい、上手い事言って逃げんな。
ってか、『あ~、めんどくせぇ』って感じバリバリじゃねぇか。」
チッ……やっぱ、そんな甘くはないか。
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