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…ーきっかけは、些細なことだった。
あの日僕は、いつものように学校の帰り道に行き着けの本屋へと寄り道をしていた。
真っ直ぐに家へ帰っても家族は居ない。
もともと、祖父母もなく両親との3人暮らしだったので、8年前…僕がまだ8歳だったころに、両親が乗っていた自動車に暴走トラックが突っ込んでくる、と言う自動車事故にあい、両親曰わく『お花が咲いて、頭にワッカ乗っけた美人なお姉ちゃんが背中に羽根しょってフワフワ飛んでる所が天国だ!!』へと2人揃って仲良く登って行ってしまって以来、僕は1人暮らしをしている。
父か母、どちらか1人位こちらに残ってくれても…と思わない訳では無かったけれど、今更言っても栓の無いことだ。
もちろん、『頭にワッカ』を乗せ、仲の良さそうな男女が涙を流しながら、天国へと登って行くところを、また、同じく涙を流した可憐で可愛らしく利発そうなお子様が白いハンカチーフを一生懸命振りながら、見送っているというお涙頂戴な光景を思い浮かべてくれて大いに構わない。
無論、そのお子様が僕だ。
あの頃の僕は大層愛らしかったと自負している。
…まぁ、つらつらと今まで長らく語って来たが、詰まるところ僕が何を言いたかったのかと言うと
つまり、僕は1人きりになってしまったんだ。
幸い、両親の残して行ってくれた遺産は高校を卒業した後も、しばらくはやっていけるくらいの貯えがあったので、今はそれを有り難く使わせてもらい何とか生活している。
この時の僕の悩みらしい悩みと言えば、高校を卒業した将来、進学しようか、就職にしようか、とそれ位のものだったと思う。
…今とあまり変わらないかも知れない。
何気なくハードカバーの本棚で、本の背をなぞっていた指を止め、そして、その指を止めたところの下にあった本を何気なく抜き取り、レジへと持って行き、
そして本屋を出た。
これが、真っ黒な髪の毛を振り乱し、曇った瞳を宙に向け、まるで人生を嘗めきったように帰り道をスキップしながら行く
・・
彼女の強制イベント突入への瞬間だった ー…。
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