第1章 ようこそ。やる気の無い天使様♥

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彼女の名前は神奈 五月(かんな さつき)。 べらぼうに偏差値の高い公立羽根高等学校の1年C組に席を置いていた。 日本人特有の真っ黒な黒髪を、無理矢理かき集めて頭のてっぺんで結んだ後、その根元からただ切っただけのようなショートカットの様でセミロングの様などっちつかずの髪の長さをしている彼女の、独創性溢れる髪型を一言で端的に言い表すとしたら、散切り頭と言うのが一番手っ取り早いかも知れない。 そしてその、切るのを面倒臭がり、伸びたい放題の前髪の下には、一体全体どこで手に入れて来たのか所謂『ぐるぐる眼鏡』が僅かな光を浴びて常に輝いていた。 彼女のその、『私!将来、オタクかホームレスになりたいの!!』とでも周囲に高らかに宣言しているかの様な容姿と、羽根高きっての成績優秀者という肩書きが相まって、醸し出されている異様な雰囲気がクラスだけでなく学校全体に本人の意志とは関係無く振りまかれているようで、高校生活も2学期を過ぎようとしていると言うのに彼女には、青春の象徴と断言しても過言ではない友人と言うものが1人も居なかった。 しかし、見た目がどうであれ、本人の努力次第でこの様なことは解決出来るはずなのだ。 実際に五月は運動をさせればたちま新記録を作り出し、絵を描かそうとするならば、どんなコンクールでも必ず入選間違いなしの絵を書き上げてしまうのだから。 言うなれば、彼女は天才であった。 ある一点を除いては。 しかし、五月は部活にも入らず、いつも真っ直ぐに家へと直行し自室でごろごろと読書をすることを好んでいたので、今日も彼女は通学路として使っている道にある本屋へと寄り道をしたのであった。
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