0人が本棚に入れています
本棚に追加
一瞬、意識が途切れた後、やっと目が覚めた五月は、まだぼんやりとしてハッキリしない頭のまま、自分が投げ出されたであろう石畳の上でゆっくりと起き上がった。
「何なんだ……?…タクッ…!」
悪態を付き、次第に晴れて来た意識に任せて彼女はとりあえず状況を把握しようと周りを見回してみる。
すると、まず第一に自分を囲むように…いや、まるで自分を中心に描かれているように冷たい石畳の上に広がっている不可解な模様が目についた。
「…ん…?」
それはまず、五方星を基本にし、その周りを取り巻く様に、彩る様に、囲い込む様に完全に彼女を中心に広がっている。
「何か……コレって…」
彼女は眉をしかめた。
そう、まさに空想小説の一齣に出て来そうな所謂、魔法陣というもののように五月の目には見えてしまったからだ。
しかし、それを認める事は彼女には出来かった。
何たって五月は今の今まで科学と言うものと一緒に生きて来たのだから。
「……ははっ……馬鹿な………ないない…そんな……」
そこまで言いかけて五月はふと人の気配を感じ顔を上げた。
するとそこには、いつの間に近づいて来て居たのだろうか、真っ黒な長衣をフードまでスッポリと頭から被った人間が、真上から彼女を見下ろしていたのだ。
「……失敗か…。」
五月には訳が分からなかったが、何だか微妙に失礼な言葉を吐いたその人物は、何故だかさらに彼女を混乱させるように、いきなり彼女を抱き上げたので、流石に五月も声を上げてしまった。
「うあ!?」
しかし、五月がまんまと混乱している内にもその人物は、まるで気にした風も無く、スタスタと歩を進め、五月を部屋の隅に下ろすと、さっさと、おそらくその人物の定位置であったのだろう魔法陣の端で歩いて行き、そこに転がっていた長く、大きな棒を拾い上げ、一回大きく振ると朗々と彼女には理解出来ない言葉を紡ぎ始めてしまう。
どうやら彼女が邪魔だったようだ。
五月はとりあえず状況説明を求めたかったが、その人物はもう『声とか掛けんじゃねぇぞ!一回トチったらまた初めからやり直し何だからな!!』と言いたげな雰囲気を醸し出して居たので、仕様がなく、五月は出来る範囲で自分の身に一体何が起こったのかを良く考え直してみる事にした。
最初のコメントを投稿しよう!