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目の前に広がる豪華な造りに驚愕している柚子を、彼女はこれまた豪華な椅子へと誘う。
柚子は言われるままに椅子に座ると、思っていた以上に柔らかい感触に包み込まれた。
(物凄いギャップだわ…)
興味関心を隠すことなく忙しそうに視線を向ける柚子に対して彼女は静かに礼をし、何も言わずに出て行った。
一人取り残されたことにも気付かずに柚子はあらゆるものを視界におさめ、感嘆のため息をついた。
「すっごい高そう…。
アンティークって言うのかしら。
年代物で、すんごいゴージャスなんだけど…」
「それはありがとう。」
独り言を呟いていたつもりだったのに、まさか声が返ってくるとは―――
いきなりのことに柚子は飛び上がるようにびくつき、勢いよく声のした方へと振り向いた。
そこには扉にもたれ掛かるように立つ、知らない男の子がいた。
いや、彼のことを『男の子』と表現するべきか、『男性』と表現するべきか、非常に悩むところだ。
さらさらの髪は少々赤みを帯びており、上品に切り揃えられている。
笑みをたたえたその表情は幼く見えるが、彼から感じる雰囲気は、落ち着いた大人そのもののように感じる。
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