一、夢見る少女

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「ぃよっっつしゃぁあ、捕まえたぁあっ!」 暗闇を引き裂くような絶叫の中で、影は天に高々と拳を突き上げた。 「ふふっ―――長かった……捜し始めて11時間23分38秒、ようやく会えたな……」 絶叫から一転、不気味で低い声が闇に溶ける。 影は突き上げていた拳で捕獲したものをがっしり掴み、再び高々と挙げた。 「まったく、ジョナサンよぉ……僕は動物園にでも売られたかと思ったよ。」 影―――彼は安堵の笑みを浮かべ、捕獲したものをひと撫でした。 そしてそのまま地面に座り込み、疲れたように長いため息をつく。 「さて、仕事も終わったことだし……帰りますかね。」 勢いよく立ち上がって丁寧に汚れを払いながら、ジョナサン片手に鼻歌を歌っている。 落ちたマフラーも首に巻き直して黒いコートをはためかせながら、その足は住宅街の奥へと向けられていたのだった――― .
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