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「さぁ…どうなのかしら。食べさせたことないから…」
真剣に悩む高須賀を見ても、女性の表情は一切変わらない。
アゲハもどうしたことかとつらつら考えていたが、その考えは高須賀によって切られた。
「アゲハさん、構わなくってよ。
私、店の方もありますし、そろそろおいとまさせていただきますわ。」
高須賀はそう言いながら、懐から1枚の封筒を出した。
真っ白な封筒には何も書かれてなく、特に厚みもない。
アゲハはそれを手にとると、顔の前でぴらぴらと揺らした。
「報酬よ。
あなたはお金を受け取ってはくれないから、せめてものお礼ですわ。」
そんな高須賀の言葉に、アゲハはなんとも言えない笑みを浮かべるばかり。
だが高須賀もアゲハからの返事を期待していたわけではなかったようで、急ぐようにコートを着た。
「白百合。高須賀さんをお送りして。」
「かしこまりました。」
女性―――白百合は音もなく扉の前に移動し、扉を開けて高須賀を待つ。
「ではアゲハさん。ご機嫌よう…」
「毎度ありがとうございます。」
高須賀の礼に、アゲハも儀礼的に返す。
高須賀が扉の奥に消えると、アゲハは頬杖をつき、疲れたように目を細めた。
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