一、夢見る少女

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「成る程、ね……。」 アゲハは全てを読み終わるとファイルを閉じ、白百合へと戻す。 白百合はそれを受け取ると、黙ったままアゲハに視線をよこした。 だが視線を向けられた当の本人はというと、両手を組んで思案するようにじっと壁にかかった絵を見ている。 その瞳からは何の感情も伺うことができず、また静かな時間が辺りを満たしはじめた。 「……白百合はどうしたい……?」 アゲハはついっと絵から視線を外し、まだ湯気を上げているお茶へと手を伸ばす。 先程よりは大分冷えてしまってはいるが、飲めないことはない。 香を楽しむようにカップを揺らし、白百合の答えを待つ。 すると白百合からは、予想通りの答えが返ってきた。 「私が口を挟むことではありません。」 「そう言うと思ったけれどね……」 白百合の答えに頷きながら、アゲハはお茶に口をつける。 お茶の風味が口の中に広がり、アゲハは年寄り臭いなと思いながらもほっと息をつく。 そして今だに直立不動で待つ白百合に視線を向け、柔和な笑みを零した。 「お前が持ってきた仕事だ。はずれはないだろうさ。」 「では……」 白百合の声に反応はせず、アゲハは再びお茶へと視線を戻し、堪能するようにゆっくり飲みほした。 .
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