お題『鏡』

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 大きな鏡が一枚。    大きいとは言ったものの、大体、大人一人分くらいのサイズである。この部屋にはそれだけが置いてあった。    その前に対峙するのは一人の老人    老人は何を見ているのか、笑ったかと思えば、次の瞬間には怒りをあらわにし、また次の瞬間には涙していた。  まるで、百面相を見ているのかごとく、変わりゆく表情。それの原因はまたとない、この鏡であろう。  鏡とは本来、姿形を映す物だが、この鏡は違った。今まで生きた『人生』を映すのである。    良い思い出も。  悪い思いでも。  全て平等に。    鏡にひびが入る。  老人の『物語』は終わりに近づいてきたのだろう。    しばらくすると、鏡は音を立てて崩れ、老人はその命に終止符を打った。  老人の最後の表情は笑顔であった。『人生』を謳歌した証拠であろう。    さてさて、あなたも老人のように悔いの無い『物語』を作っているのでしょうか? それはこの部屋に来てもらえば分かるでしょう。  では、また。
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