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「春先でも、夜は冷えるね…、しかし…」 広めに作られた路地の端、街灯の直ぐ隣に寄り掛かるでもなく、ポツン…と、つばが長めの帽子を深く被った、60代くらいの男が立って居た。 男はふくよかな体格に、手足が短い印象を与える暖かそうなコートを着て、右手には、黒く光るステッキ杖を持っていた。 帽子を被っては要るが、少し髪が長いらしく、白髪のちぢれ毛がチラチラ見えていた。 男の顔を覗くと、丸い銀縁の眼鏡を掛けて、もじゃもじゃ~とした白い髭も蓄えていた、全くと言って良いほど、表情が読めない、時折、眼鏡が上下する位しか動きがない。
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