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凄まじい一撃である。
元来刀は力を乗せて斬る動作に移る。横薙ぎ等は多少は斬れるが、真っ二つとなると話しは別である。
それを天惷はこなしたのだ。
下半身からは火山の噴火のごとく鮮血が飛び散り、上半身はゴトッという音ともに大地に落ちた。
天惷はすぐさま刀を返し、後ろから迫り来る凶刃を跳ね返すと向かってくるもう一人が放ったくないを弾いた。
「凄まじい働きよ。鬼神と言った所か……」
突然、木の上から声がし、ハッと声のした方向を見ると赤い狐の仮面をした忍びが神麗の体を担ぎ、木の上に立っていた。
「なっ!? 貴様ぁ!」
天惷は怒りの顔で、赤い狐を睨む。
その目に写るのは肩に担がれた神麗の姿だけ。
「フッフッフッ、貴殿が悪い。
戦いにより姫を忘れ。目を離した貴殿がな。
姫は貰い受ける。さらばだ。」
赤い狐はそう言うと、シュンと姿を消し残っていた忍びも次々に姿を消していく。
すっかり静まり返った森には真っ赤に染まった鬼神が一人。
マモレナカッタ?
ダレノセイ?
オレノセイダ
オレガメヲハナシタスキニ?
「姫、……姫! 神……麗……。神麗ぃぃい!」
まるで狂った獣のように叫ぶ。
が、姫は……神麗は舞い戻らない。
ただ、自分がしてしまった罪を咎めるのみ。
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