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そして今も、俺は生きている。毎年、この日になると、彼女との思い出を思い出さずには居られなかった。
やがて、海に着いた。
砂浜を歩き…海辺に寄りアスターの花束を海に撒くと波が花びらを運んだ。
鮮やかな紫の広がる海をじっと眺めた。そして、帰ろうと振り返ると
さっき公園にいた小さい女の子が居た。そして、隣には喪服の…居るはずのない彼女の姿…。
目を疑った。
そして、彼女も同じように驚いた様子でいた。
彼女は生きていた。いや…幻かと思ったが違った。
紛れもなく彼女だった。
彼女は涙を流し駆け寄ってきた。
疑いもなく真っ直ぐに…。
死んだはずの君に抱かれた時に
懐かしい匂いがした。
キョトンとして見守る子供を余所に。
それからいきさつを話し合った。
そう。彼女は生きていた。海岸へ来た彼女は海に入り自殺を図ったのは事実らしいが子供を一緒に道連れにする事が出来ず引き返したが大事な靴を無くし、同じ物を探す事に必死で帰らなかったのだと。そして彼女の去った海に靴が残っていたのを見て、死んだのだと伝えられたのだと。
その後に彼女の遺体を探して海に来た姉が、俺が海に入る姿を見て人を探し行ったが、戻った時には枯れたアスターだけが海岸に残っていた事で俺の死亡説が彼女に伝わり、彼女は確信するのが怖くて部屋に近寄れなかったと、姉は俺には申し訳のない事をしたと悔やんでいたと言う。
真実を知った2人は生きていた。
そして、そんな2人の子供も。
死んだはずのお互いの為に。
何だか可笑しくて…涙が出た。
嬉しかった。
ただ、起こり得ない奇跡としか思えない奇跡。
いつの間にか雨は上がり、海はキラキラとアメジストが煌めいていた。
それから3ヶ月後、2人は結婚し3人で海外へ引っ越し
独立し仕事を始め、
新たな幸せを手に入れた。
生きる事で得た奇跡と共にー…。
『紫の章ー完結』
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