†第三楽章†

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雨の降る部屋で彼女は震えていた。もう戻れない過去に理由はない。求める未来が違うのに、このまま過ごす事が不可能だった事は変わりない事実で、愛しきれなかった俺を責める事もせず、ただ泣いていた。そして、彼女からのさようならを聞き部屋を出ていって。降りしきる雨に傘もささずに…。心配する資格はない。そして、それが最後に。やがて一週間がたち、出来たばかりの楽譜を持って空港へ向かう。途中に喪服の女を見かけた…黒いベールに隠れた顔は美しかった。君は、まだ泣いているのだろうか…。少し、君を思った。 海外へは何度目だろぅ…何度も通うならいっそう引っ越した方がいい、あの部屋に残る理由はもぅ無いと考え、現地に着くと帰るまでの時間に部屋を探して歩いた。数日後、家へ戻るとポストに合い鍵が入れてあった。部屋へ入り、今度はリビングに一輪の花がグラスにさしてあった。枯れてくすんだアスターの紫。花言葉は…信じる恋、さよなら、追憶、そして心残り。そう前に教えて貰った事がある。一体何を伝えたかったのか…。その時、電話が鳴った。仕事場からかと思い受話器を取ると、彼女からだった。
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