107人が本棚に入れています
本棚に追加
「浜辺に行ってみたい」
珍しくそんなおねだりをしたのは、妹のシャーリーだった。
「すぐそばにきれいな砂浜があるのでしょう? 」
「うん。そうだけど」
ちょうど昼食を終え、洗い場で二人分の後片付けをしていたエドワードは手を止めて、首を傾げた。
まっすぐな髪、まだあどけなさを残した端整な面立ち。
それでいて、瞳だけはどこか大人びていた。大人びた表情を浮かべている。
「でもシャーリー。泳ぐにはまだ早いよ。あと一ヶ月くらいしないと、水浴びも出来ないんだ」
「解ってます」
シャーリーはいつもの車椅子の上で、エドワードの手から洗い終えた小皿を受け取る。
そして、小さな手に持った布巾で、シャーリーは受けとった皿を拭き始めた。
「兄さん。私、もともと泳げません」
「……そうだったね。ゴメン」
皿を拭き終えたシャーリーは、慎重な手つきでそれをテーブルの上に置いた。
「でも、海の音と匂いは好きなんです。もし、お兄さまにお時間があれば、近くまで連れていっていただけないでしょうか? 」
「うん……」
エドワードは少し考えた。
最初のコメントを投稿しよう!