プロローグ

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――静寂 しんしんと静寂は降り積もる。 ただひたすらに、樹木の年輪のように、幾度にも幾度にも折り重なっていく。 ただ、白いだけの世界。 それは、そんな真冬の出来事だった。 外から聞こえる強い風、空き缶の転がる音。 そして、元々は個室の出入口であっただろう場所にかかっている表札が、カタカタと揺れ動く。 7年前。AN計画の影響は各地に広がっていた。 この病院も例外ではなかった。その病院は、すでに病院として機能していなかった。 所々に飛び散った血の痕。 男の右手の中指をつたって、ドロッとした赤い液が、ポタポタと床に垂れる。 すぐ傍には、首や心臓をめった刺しにされた三人の男たち。 少し離れたところには、上半身しかない女性の体が転がっていた。 倒れている人は皆朱く染まった白衣を纏っていて、すべての遺体は、ピクリとも動かない。 病院内の、無惨な光景。 それら死体を呆然と見つめる少年。 泣くこともなく、ただ見ていた。
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