プロローグ

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その病院で起きた虐殺事件を解明するために、懸命に働く政府の人間がいた。 「新入りはどうした」 「今下に降りて吐いてます」 「最初さっきのトイレに駆け込んだんスけど、あそこも……、アレでしょ」 「まったく――。現場汚しやがって」 カメラで現場を撮りながら小柄な男が言った。 「でも班長。何だと思います? 」 班長と呼ばれた男は、半開きになっているエレベーターの出入口を開けた。 「なっ――」 そこには、足を潰されたもの、腕が引きちぎられているもの、それらが積み重なっていた。 「うっ……」 その光景を見た何人かの作業員は、トイレに駆け込む。 「こんな現場は初めてだ」 大柄の男が言った。 それはこの男に限ったことではない。 班長とて例外ではなかった。 仕事でなければ、何が起きたかなんて検証したくもない。 「ただ、一つ言えることは――」 ――何時間か前まで、ここは地獄だったってことだ。 「班長、少年の姿が見当たりません」 逃げたか。 「あの少年って政府のアレですよね」 その検証は一日では終わらなかった。
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