¶PROLOGUE¶

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ここは深い深い深緑の森。 見渡せば幾つもの足跡がばらまかれている。 しかし、そのどれもが森へ近づく事を恐れるように入り口付近で行ったり来たりを繰り返していた。 森に飲み込まれると中は太陽を忘れさせられるかの様に暗く、それでいて複雑に入り組んでいた。 森の中心へ向かう程にそれは密度を増していき、途中からは視界を完璧に奪われ音も届かなくなっていた。 暗闇を通り抜けると、先までとは対照的に閃光の様に光を巡らせるエリアがあった。 その半径は一kmはあろうかと言う場所で、中央にはこの世界にはこの場所以外、どこにもありはしないであろう、巨大な大樹が根を張っていた。 それは言われるまでもなく明確な竜の形を造り出していた。 そして、大樹は独特な雰囲気を漂わせ、暗く冷たい、負のエネルギーを溜め込み、今か今かと時が満ちるのを待ち続けていた。 その姿はまるで、生ある者の様に執拗に息づいていた。
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