乗れたのはいいけれど

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乗れたのはいいけれど

予想通り、船の中は最悪だった。 台風並に海が荒れ、歩くのもままならない。 いつもなら、船の乗客と、いろんなを話し聞いて楽しくするんだけど、今日は波が凄くて無理。 みんなもう休んでいるのか、ロビーや廊下には、誰もいない。 (ここまで揺れるとは・・) 倒れないよう手すりに掴まり、ゆっくり歩く。 洗面所までの短い距離も、長く感じる。 バタン!と大きな音共に、潮風が勢いよく流れ込んでくる。 誰か、夜風に吹かれていたらしい。暖房が効きすぎた船内には、流れてくる風はとてもひんやりして、気持ち良かった。何気なしにドアのほうに、 (無謀な人もいるなぁ) 落ちたらどうするんだ? と思いながら、顔を向けると・・・ 《あ・・》 あっちも気づいたらしい。ドアの前に立ってたのは、船に乗るとき、クスクス笑っていた青年だった。 なんとなく、ばつの悪い間が・・・ その時、大きく船が揺れた。青年が不意をつかれバランスを崩す。 「危ない!」 つい、体が動き・・・ 自分のほうがハデに転んだ。
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