悲恋歌②

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お前には白い花がよく似合う   そう今も……           手届かない   お前はいつも雲の向こう  霞んで消える   俺には無理な場所   そう諦めて自分の気持ち抑えていた   それでも俺は   追い掛けて   掴みようのないのがわかってて   手を伸ばす   そんな日々はいくつも続いた     ある日お前と俺は話をした   ″好きなものがすぐそばにあるのに届かないって虚しいよね″     そうお前が言う   まるで俺の心を見透かしたような言葉   そして気付く   同じ気持ちだということに   近くて遠かった距離   それが縮まったとき覚えたひとつの恐怖     不安が募った己の欲で いつかお前を傷つける気がした……     届かなかったときにはなかった想い   やがてそれは一つの結論に達した   傷つけるくらいなら   失うくらいなら           いっそ今の幸せなままで      笑顔なお前を最期に抱きしめ   愛してるとつぶやいて   そのまま……   周りは一瞬にして赤く染まり   お前の着物は血に塗れた  ああ……でも     その赤さえ受け付けない  一輪の白い花   やはりお前には白い花がよく似合う     安心しろ   すぐに俺もお前の跡を追うから       白い花の中には一羽の蝶が静かに横たわっていた………
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