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翌朝
「ありがとうございました。お気をつけて」
最後の客を送り出した大和はポストから新聞を取り館内へ戻っていった。
「これで皆さんチェックアウトしたわね」
「あぁ。戸締まりをして出掛ける準備をするか」
地下の事務所前で話をしている2人の会話を車庫で聞いている人物こそが昨夜、渚が目撃した人影であり新聞の連続強盗殺人犯でもある江川であった。
(あとはこいつらだけか…)
逃げるにも金がいるし通報される訳にもいかない江川は慎重に事を運ぶ為のシュミレーションを頭で何度も繰り返した。
車庫に干してあったタオルを顔に頭と顔に巻きつけ顔を隠しゆっくりと扉を開けた。
半開きの事務所の扉から中を伺うと詩織が1人で準備をしている。
(女1人か…)
詩織だけなのをチャンスと判断した江川は中へ駆け込んだ。突然の事に詩織は驚き固まってしまい江川にあっさりと拘束されてしまった。
「金を出せ!」
詩織の喉元に包丁を突きつけ脅したてる江川。
「……」
詩織は恐怖で言葉にならなかった。
「出さないと殺すぞ!」
尚もまくしたてるが詩織は言葉を発しない。時間的な焦りから江川は詩織の腰の辺りに包丁を突き刺した。
「ん…がぁ!」
突然の激痛に声にすらならない呻き声をあげる詩織。
(ヤバい!)
たいして大きな声ではなかったが焦りを感じている江川に危機感を持たせるには効果は十二分にあった。
グサッ!
グサッ!グサッ!グサッ!
グサッ!グサッ!
何度となく突き刺される激痛に詩織は意識を失い崩れ落ちた。それ故に腰回りを滅多差しにした最後の一突きが詩織の心臓を背中から貫いた。
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