341人が本棚に入れています
本棚に追加
医師は暫くマオを見つめていたが、不意に驚いたかのように目を見開いた
「………もしかして、ジュン君かい…?」
「…今は、マオです」
医師はマオとアキラを見比べると浮かせていた腰を下ろし、優しげに目を細めた
「そうか……それで、今日はどうしたんだい?」
「あの、実は…」
医師は促すかのように真剣な表情でじっと聞いた
「………【痛み】が、薄らいできたんです」
小さな声だがはっきりと伝えたマオに、何故此処に来たかを聞いていなかったアキラは驚きを表情にした
マオの言葉に医師も驚いたがじっとアキラを見つめると一つ頷いた
「それは、そこの彼のお陰だろうね」
「……俺、ですか?」
医師はまた一つ頷くと言葉を続けた
「この子に名前を付けてあげたのは君だろう?今マオ君がどういう生活をしているかわからないが、新しい名前と君のお陰でマオ君の心は変わりつつある。上手くいけば、マオ君の力も消えるだろう」
医師は優しくマオの頭を撫でながらマオに微笑みかけた
「いい人に出会えたね」
医師の言葉にマオは頷くと大人しく撫でられた
「お母さんの事は、知っているのかい?」
手を離すと医師はカルテに書き込みながら聞いた
「………はい」
「随分と心配していたからね」
俯き気味のマオの頭を、今度はアキラが撫でた
その後いくつか話をした後、二人は医師に別れを告げて病院を後にした
「先生、先程の患者さんは…」
「昔見た事のある子だったのだけれどね、私にはどうすることも出来なかった」
医師は二人の出ていった扉を見つめながら呟いた
「本当に、いい人に出会えた」
.
最初のコメントを投稿しよう!