願う消滅

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大学のサークルで知り合ったばかりの朝子と、偶然帰りのバスが同じになった。 よって今現在、朝子と二人でバスに揺られ、並んで吊り革に掴まる。バスは苛立つ程混んでいる。 二人の間にあるのは、気まずい沈黙。     それを気にしてなのかもしくは無意識なのかは分からないけれど、朝子は突然ミニサイズのペットボトルをあたしに差し出した。     「ミルクティー。あったかいよ」 「…ありがとう」 正直、ミルクティーは嫌いだ。 雨と泥が混ざったようなあのベージュ色。吐き気がする。 だけど、NOと言えない日本人代表のあたしはやはりNOと断れないまま、それを素直に受け取った。     コクン。 あまいあまい、ミルクティーの味が食道を通って身体全体に流れ込んでいく。 それを満足そうに見た朝子は、さっきまでの沈黙が嘘のように言葉のひとつひとつを悠長に紡いでいった。
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