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「馬鹿じゃないの!?猿だって学習能力あるのよ!?あんた猿以下なの!?」
ヒステリックに僕に説教してるのは、僕の指導ナースの、横多ルミ先輩だ。
因みにルミなんて可愛い名前だけど、性格も外見も可愛いという言葉にはほど遠い。
まぁルミ(心の中では呼び捨て)が怒るのも分かるけど。
今日、前にやった失敗をまたやっちゃったんだよなぁ……我ながら情けない。
でも、猿以下ってあんまりな言い草だと思う。
結構図々しい僕だけど、ちょっと傷付くぞ。
「すいませんでした」
取りあえず謝るしかない。
謝って済む話じゃないっていうのは、重々承知しているけど。
「すいません、で、済まされない事もあるんだからね!」
噛み付きそうな顔で、僕に捨て台詞を残したルミは、その巨体を揺らして僕の失敗をフォローする為にスタッフステーションから出ていった。
と、同時にルミと僕を密かに見ていたほかのスタッフの間に、ほっとした空気が流れるのを感じた。
身の置き所がない、いたたまれない気持ちになる。
申し訳ないなぁ、とは思うけど、言い方ってあると思うんだ。
毎日毎日、頭ごなしに怒られて、僕のプライドは、ぼろぼろだ。
噂によれば彼氏はいるらしいけど、僕だったら、あんなキツい女、絶対嫌だ。
まぁ向こうも、僕みたいな使えない男、嫌だろうけど。
僕は誰にも悟られないように、こっそりと深い深い溜息をついた。
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